留学生がドイツで初めてバイトをした話。
ドイツに来て半年、初めてバイトをした。その仕事なんと、
ベビーシッター!?
山沿いの素敵な住宅地に住む依頼主さんは、日本人のお母さんとドイツ人のお父さん。お二人とも大学で教鞭を執っているそう。
てっきりご夫婦で出掛けるための留守番かと思ったが、ご夫婦に出掛ける様子はない…。「自宅にいるのにベビーシッター?」と懐疑的だったけど、そのワケをビシビシ感じるとは、この時は思ってもいなかった…。
13時からsittingを始めた。最初は木製のプラレールで遊んだり、本を読んだり「あれ、自分ベビーシッター向いてるじゃん(ドヤ」ってなっていた(笑)しかし、お母さんが自宅にいるのを知ってるからか、30分おきくらいに「ママ!ママ!」と叫んでは、仕事中のお母さんを困らせてしまった…。その度にお母さんは、仕事を中断しては子どもをあやし、また私に預けることの繰り返しだった。
その後、キッチンと居間を何十往復もしたり、抱っこやおんぶをせがまれ…正直、私のほうが疲れ果てそうだった。
まさに小さな巨人。
あまりの嬉しさにハッキリと時間まで覚えている。
16:43:就寝。
寝かしつければイージーと言うアドバイスを小耳に挟んだけど本当だった。
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今回ベビーシッターをして思ったこと。
▷違う世界を見ているみたい!
間接照明の背の高いランプは、大きなヤシの木に。
ソファの裏の隙間は暗いトンネル。
椅子は絶好のクライミングスポット。
リモコンは高性能の新型電車。
動物型のクッキーだって、彼の手にかかれば命が吹きこまれる。
もうきっと私は子ども達より、ずっと色々なことを知ってしまって、同じように世界を見ることはできない…。けれど、いつまでも彼らの目に映る世界に思いを馳せ、同じ目線で子育てしたいと思った。
▷生活用品が武器になる。
机の角、カーペット、放ったらかしの玩具…どんな身の回りの生活用品も、時として彼らを傷つける武器になり得た。ベビーシッターという〈他人の子どもを預かる〉中で、すごく気を張っていたからか、改めて屋内の危険に気づかされた。
▷日本で〈学生ベビーシッター〉流行らないかな?
「保育所落ちた日本死ね」とか言う前に、気軽に時間単位でベビーシッターを利用できたらいいなって思った。ほら、今流行りの”シェアリングエコノミー”みたいにさ、”子育てシェアリング”みたいな!理由は…
①安価
日本でベビーシッターの料金相場は平均して2000円だそう。これでは、お金がない人ほど、働かなきゃいけないのに、子どもを預けられないんじゃないか…。今回私の場合は、5時間で45Euro。日本円にするとだいたい時給約1000円。
さらに、急なsittingだと割高になるけど、学生だと「今日空いてるからやりたい!」っていう日が誰にでも一度はあると思う。そんな日に学生がコミットできたらいいんじゃないかな。
②sittingの経験から親になる苦労の本質を知る
私は子供が欲しいと思っている。でも「ママ!」って子どもに求められて、仕事を止めて子どもをあやすお母さんを見て、正直「しんどそう。」って思った。
たぶんこの「しんどそう。」って、〈子供がほしくない理由〉給与や預金額、雇用条件とか、机上で、数値で示された理由とは違う。経験して実感しないと分からない、親の苦労の本質ような気がした。
③シッターに子どもをあずける慣習をつくる
日本って外国と比べるとベビーシッターはまだまだ普及していない。おそらく、母以外の人が子どもを育てることがまだまだ浸透していない。それは私も然り。今までは、「見知らぬ他人に子どもを預けるなんて…できれば自分で育てたい。」って甘い幻想を抱いていた。多くの日本人はそう思ってるんじゃないかな?
でも今回ではっきりわかった。無理。
少子高齢化が進んで、まだ仕事が人工知能に置き換わるまでは、働き盛りが働いていかなきゃいけない。その時、子どもがいればその人は本当に何もできなくなる。だから、依頼主さんがお金を払ってでも、ベビーシッターに子育ての一部を頼むという選択は賢いと思った。
外国だと学生がベビーシッターをやることは、よくあること。その経験や慣習が、親になって受け継がれる社会が、日本にもあったらいいなーって。
▷女性として、母として。
5時間子どもに付っきりで過ごしただけで、髪はボサボサになるし、服は汚れるし、何よりめちゃめちゃ疲れる!!!母親になって女性としての魅力が云々…っていうけれど、しょうがないことだと思った。
むしろ、子供がいるのに美を極めようとする女性。そして、それを美化する社会。
あなたが化粧をしている10分、髪を整える10分。子供は何をしていますか?
他人の子供だからかもしれないけれど、本当に一瞬も目を離せなかった。
子どもを1人にするって、子供死なせかけるようなものだった。
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ふぅ、疲れた。
もし母になってこれが、24時間・毎日・数年間と思うと、本当に気が滅入りそう。
でもね。子どもといる時、いくら疲れてても、どうか子どもの前では笑顔でいようって思えた。いや、自然と笑顔になっていた。私はパパでもママでもないけど、どうかこの小さな巨人には、人の笑顔や優しさ、温かさを知って欲しいって思った。いや、本能なのかな…これが母性なのかも…大人になるってことなのか…。
お金に目が眩んで引き受けたベビーシッターだったけど、色々考えさせてもらった。
子どもを育てるってこんなに大変なことなのか?
子どもがいるってこんなに不自由なものなのか?
子どもがいるって幸せなのか?
お金を払ってまで人を雇うような、一瞬も目が離せない子育ての大変さに、簡単に「子どもがほしい」って言えなくなった。
それでも、子どもが寝ている時の寝息や、大きく上下する胸。寝付けたあとの安堵と、束の間の達成感は、すごく幸せだった。もし自分の子どもだったら…。
小さな巨人からひしひし伝わる「生」への愛おしさに、大人になる。母にになる勇気をちょっとだけもらった気がした。
最後に頂いたコーヒーは、いつもより何だか苦かった。
これが大人の味ってやつか。
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留学生、留学を考えてる方
今回ベビーシッターのバイトは、Travelico[トラべロコ]https://traveloco.jp/というサイトを通して依頼をいただきました。自分のプロフィールを載せるだけで、運が良ければ、素敵な出会いや経験ができるかも!
逆に私は、トラベロコを通して依頼もしたことがあります。(コペンハーゲン大学で研究をしている女性の方に、デンマークの教育について講演をしていただくプランをお願いしました。) ぜひお試しあれ!
最後に…
このブログを読んでいるかわからないけど、お父さんお母さん。
育ててくれてありがとうー!